仙台、塩竃、菅野美術館

美術館全景

宮城県塩釜市玉川3ー4ー15

宮城県のほぼ中央、鹽竈神社門前町として、また、港町として発展してきた塩竈市
その町の高台にある、不思議な雰囲気をにじませる美術館です。

高台にある住宅地。車一台がやっと通れるような、曲がりくねった路地の間。何の変哲もない民家が連なる通りの奥…。
ふと、視界が開け、斜面にその身を踊らせんばかりに立つ美術館。それが、今回の目的地です。

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この住宅街の奥…。その先の路地を曲がると…。

どーんと。

正直、今回目的を持って来たわけではなく、「そういえば、そんな美術館があったな〜」程度の感覚で訪れたのですが、軽く意識を持って行かれました。

さび付いたような表面を見せる、重いとびらを開くと、中は白い塗装に統一された、無機質な空間。受付と、簡単なミュージアムショップになっているカウンターで、女性の方に、「今日は、建築の方を見に来られたのですか?」と聞かれ、ちょっと固まる。(汗)
なるほど、この美術館は、収蔵作品を見せるという本来の目的以外に、建物そのものを展示物として見て貰う側面があるようです。

「いえ、予備知識0で来ました。ハハハ。(何の展示が行われているのかも知りませんでした)」
す、スミマセン…。
もう、笑うしかない私に、親切に色々教えていただきました。

やはり、建物そのものを見せる側面があるようです。気鋭の建築家阿部仁史さんの設計による地下1階、地上2階のキューブ状の建物。中の構造物は全て金属(鋼板)で覆われており、床、壁、階段全てが、金属の溶接造になっています。
壁面が全て金属というのは、美術館としては、展示方法を自由にアレンジできる側面がありますね。なにせ、磁石を使えば、いかようにも展示物を固定できるのですから。
そして、不安定に仕切られた空間。白い鋼板。板には、一定のパターンで浅い窪みが掘られています。まるで、ドットのパターンのよう。
柱の無い内部は、全て鋼板で仕切られています。それも、まっすぐではなく、まるで無秩序に、斜めに張り出しています。斜め故に、空間を三角形に仕切り、その通路を複雑にします。
パッと見た印象は、クフ王のピラミット。あの内部空間を、キューブ空間に押し込んだ感じ。狭いながらも、その通路の先、階段の先、仕切られた壁の先に、どんな空間が待っているか分からない不安とドキドキ感が襲います。

そして…。一定のパターンの無い空間。たとえば、まっすぐな四角の通路であれば、行きと帰りの風景は同じように見えるでしょう。ですが、三角に仕切られた空間では…?行きと帰りでは、その見え方が違ってきます。
地下1階の奥。一通りの展示品を見て、そろそろ戻ろうと思ったとき、帰りの階段を見た瞬間…。
「あれ、ここから下りてきたんだっけ?」
ちょっとした異空間。よぎる不安。
まるで、エッシャーの絵の中にいるような不条理感がこみ上げてきます。

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さて、そんな美術館の、今回の企画展は。
野老朝雄展ーSolo Exhibition of Asao TOKOLOー


建築意匠の一つ、建物の外観を決めるデザイン(ファサードデザイン)のデザイナーとして、デザインと建築、両面で活躍している作家さん。
また、そのデザインを防災の分野に組み込み、一枚の布をポンチョのような服や、数枚の組み合わせでテントにすることもできるという「IZAt」という作品を生み出した事でも知られています。

デザインの基本は、正方形や正三角形に描かれた幾何学模様。その模様は一定の法則があり、全ての面が、他の正方形や正三角形につながる線を生み出すというもの。
…。コレを文章で説明するのは非常に難しいので、美術館のサイトにいってみて下さい。
連続性を持った物体がつながりあうことで生み出される、平面の無限空間。一種のフラクタルアートですね。連続性が生み出す安定感と安心感。
そして、それが建築の分野になると、たとえば、1枚のタイルに描かれた模様が、4方向の回転で組み合わせることにより、無限の模様を生み出せる。そのうえ、1種類の模様でしかないという事実が、1種類のタイルの大量生産という低コストを生み出すという計算。建築の為のアートとも言えますね。


不規則な空間に並べられる…規則性を持った模様。

そのコラボレーションは、日常すら切り離す力を秘めています。


…。今回は、ほんとーに不意打ちでした。なんかもう、来て良かったなあ〜。
もう、いろんな巡り合わせに感謝です。



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んでもって、ふれあいエスプ塩竈で一休み。