角田宇宙センター一般公開

思い出した順に公開。

宮城県角田市にある角田宇宙センターは、JAXAの宇宙推進系の研究開発を主な事業としています。当センターでは、打ち上げに用いられる実際のロケットエンジン開発や将来のエンジンの技術研究などを行って、日本の宇宙用エンジンの研究開発を常にリードしてきています。
・角田宇宙センターパンフレットより

今年もやってきました!角田宇宙センター「科学技術週間」一般公開です。筑波も良かったですが、ココ角田宇宙センターはロケット開発の最前線だけあって、職員さんの話がテクニカルに専門過ぎて、メカフェチ脳が異様に活性化しそうです。
今回は、西地区が「極低温インデューサ試験設備」、「液体ロケットエンジン要素試験設備」、「ラムジェットエンジン試験設備」、「計算センター」。東地区が、「宇宙開発展示室」と、3年ぶりに公開になる「供給系総合試験設備」、「高空燃焼試験設備」(※ただし、施設内見学はできず、バスツアーの形です。)です。

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極低温インデューサ試験設備
ロケットエンジンの燃料を高速で燃焼室に送り込むには、タービンポンプという機械を使用します。そのタービンポンプの入り口に取り付けられ、燃料を送る手助けをしているのがインデューサと飛ばれるスクリュー状のものです。極低温インデューサ試験設備では、液体窒素を使い、実際に極低温状態にして動作実験を行うことができます。

難しい説明は別として、去年と同じく、液体窒素に浸した物体がどのようになるかの実験を行っていました。これは、ビニールのボールを浸しているところ。常温のボールが極低温まで冷やされるとカチカチになって、壁に当たるとコナゴナになってしまうという実験なのですが…。

女の子が投げたボールは、カチカチになりきっていなかったのか、破片受けの金属の容器にぶつかって、派手な音を立てて跳ね返ってきました。

また、バナナを極低温に冷やして、釘を打ってみようという実験も行われています。ただ、バナナが太すぎたのか、5,6回打つとサクッと釘にめり込んでしまっていたようです。

上の写真がインデューサと呼ばれる部品です。水素タービン用と、酸素タービン用の2種類があり、同じような表面に見えますが、水素用がチタン。酸素用がインコネル718という素材で作られています。これら1個の部品の値段が、クラウン一台分になるそうです。インゴットからの削りだしで、超硬質のですから削りだしに何日間もかかるそうです。

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液体水素ロケットエンジン要素試験設備
角田宇宙センターでもっとも古い試験設備。ロケット開発の初期段階から、模型を使った噴射実験を行っています。今回は、ただの施設見学だけではなく、「液体窒素噴霧の可視化試験」を行っていました。

液体窒素をエンジンノズルから噴射して、その様子を観察する試験。煙のように見えていますが、常温に触れた液体窒素が瞬間的に蒸発し、気化したもの。実際は液体を真っ直ぐ噴射しているだけです。ただ、実際に行われている試験と同じ手順で進められており、一つ一つの手順を踏むアナウンスやトランシーバーでのやり取りがあり、緊張感がありました。

エンジンノズルから5メーターほど離れた場所から見学になったんですが、高そうなデジイチを構えている男の子が何人かいたり。お父さんのカメラかな〜。

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ラムジェットエンジン試験設備
本来超高空で、超高速でしか飛ぶことができないスクラムジェットエンジンを、地上にいながらテストできる実験設備。最大マッハ8の環境を作り出し、噴射試験をします。
現在の模型では、1台あたりの推力が2トン程度の重量しか持ち上げられないそうですが…なかなか具体的な話が聞けないので、これからの開発は難しいのかなあ。軍用ということであればメリットは大きいのですが、100パーセント民間技術で開発が進められている日本では難しい技術なのかもしれません。


人がいなくなっても、技術者の人を独り占めして話を聞いていましたw

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計算センター
高温高圧にさらされ、実験用機材も大型し、高価で費用もかかるロケット開発ですが、近年のスーパーコンピュータの発達により、制度の高い「机上の計算」が取れるようになりました。実際の実験データで補正された「机上の計算」は、実機の状態に非常に近く、またコストも安く、複数のパターンの実験が短時間に行えるため、非常に有効な手段となりました。

とはいえ、やっていることは難しいんだもんw

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東地区

外に置いてあるH−2ロケット第二段エンジンの燃料タンク。これ、実験用の機体だと思っていたんですが、実はH−2の7号機として、実際に宇宙に行く予定だった本物っ!ウソ去年はそんなこと一言も言ってなかったのにw
スケジュールの都合により、先に8号機が打ち上げられたのですが、悲劇の異常燃焼をして海に墜落。8号の後に打ち上げられる予定だった7号機は、欠点が改善され無ければ打ち上げられないと延期。そのままH−2Aにモデルチェンジしてしまったものだからそのまま抹消。ならば展示用にチョーダイ…ってことで、ココ角田宇宙センターにやってきたそうです。

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東地区バスツアー
残念ながら撮影禁止だったので、パンフレットの地図を抜粋。

もともとは宇宙開発事業団の角田ロケット開発室だったところ。西地区(科学技術庁航空宇宙技術研究所角田支所)がおもに研究開発に重点を置いているのと違い、より実践的な試験設備となっています。それもそのはず、現在打ち上げられているH−2ロケットの主要部分、燃料を送るターボポンプと第二段ロケットの納品前検査試験が行われているからです。日本が打ち上げる全てのロケットは、ここ角田での試験をパスしなければなりません。
2006年4月の公開時は、施設内を徒歩で歩いて見学させてもらえたんですが、今回はバスの車窓から職員さんの説明を受けて通り過ぎるだけでした。(もしかして…2006年はH−28号機の墜落で大変だった時期だから、より国民の理解を求める…とかなんとかの話があって徒歩見学が実現したのかも)

供給系総合試験設備
ターボポンプの試験設備になります。実際に水素燃料をターボポンプに通し、動作試験をします。大まかにいって、燃料の供給施設、ターボポンプをすえつける台座、通した燃料を安全に燃焼させ、廃棄する設備に分かれます。ターボポンプの試験中に使われた水素は、もとのボンベに戻すのは難しいらしく、囲いやプールやウォーターカーテンで守られた燃焼施設で燃やして廃棄されます。

高空燃焼試験設備
H−2ロケットの第二段エンジン、LE−5型のテストを行う施設。第二段ロケットは、ほぼ真空中を飛行するので、テストも真空中で行わなければなりません。(空気の圧力が減って、ロケットの炎の形が変化するため)そのため、第二段ロケットがすっぽり入る燃焼施設が、そのまま真空チャンバーになるという大掛かりな設備になっています。これが試験当日、舞い上がった水素と酸素の化合物…水蒸気で、施設上空に積乱雲を発生させる原因。バスの参加者の方で、富岡に住んでいる方が、「ときどき施設からものすごい雲がでてますけど?」なんて質問がでるくらいすごいらしい。うわ、ちょっと見てみたい。
4月に行われた試験は、こんど飛ばす「あかつき」用ではなく、その後に打ち上げられるエンジンだったようです。しかも5月連休後にはまた試験の予定が…。事業仕分けで色々言われていたようですが、とりあえず打ち上げ予定だけは順調に進んでいるみたいですね。

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2009年4月公開時の記事
2008年4月公開時の記事
2006年4月公開時の記事