東京、デザインフェスタギャラリー、マリアの心臓

次の日、南千住駅です。とりあえず、新宿方面に向かいます。
…と思ったら南千住駅構内で信号故障だそうです(8時57分)。
駅の北側、50mくらいのところに電車が止まっています。
おいおい、いきなりかよ(笑)。
その停車してた電車に乗ったのですが、築地に来るまで、出入り口上の電光掲示板がずーっと「南千住に停車します」と表示してたよ。なんかこう、閉鎖空間の疑似体験みたいで、不思議な感じ。

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11時
デザインフェスタギャラリーに到着。
10月2日から8日までのイベント「秋に花ひらくオリジナル工芸の世界!!」



原宿のちょっと奥まった路地の裏、建築用の足場材をデタラメに組んだオブジェに身を包まれた赤い建物。スプレーアートで彩られた建物は…塗料臭い?
多分、新しい分館を作っている途中だったので、その匂いが漂っていたのでしょう。

古いアパートを改修したのでしょうね。それぞれの部屋を1つの展示場として貸し出し、様々なアーティストが独自の発表をしています。
どことなく、アウトサイダーアートの香りと、学校の文化祭のような混沌とした雰囲気を持っていますね。
今回は工芸中心の展示ですが、純粋に道具としての焼き物を展示していたのは1つしかなかったような(笑)。
どちらかと言うと、粘土を素材とした造形物の展示…と言ったところ。

その1つ。大磯工房。あの不思議な空間の中で、ちゃんと実用的な食器類が整然と並んでいる部屋に入ったとき、正直ホッとしましたよ。
やわらかに輝く空の色を写し取ったような青。カップの内側に、水平線から天の頂上につながる空のグラデーションすら閉じ込め、外からの日の光に輝いています。
私も1つ、小さな首飾りを購入。マガタマの形をした小さな空は、今回の旅のお供として、付き合って貰うこととしましょう。

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1時
マリアの心臓に到着。
現代創作人形、おもに球体間接人形と呼ばれる人形たちを展示している部屋。

渋谷、人々でごったがえすビルの谷間。小さな雑居ビルの地下1階。その閉鎖空間は存在していました。
…。え〜何回か場所が判らず通り過ぎました。案内が小さいのと、マッサージ屋さんの看板が目立ち過ぎて、目に入らんかったよ。

エレベーターを出た瞬間から、日常と違う空間です。
一目見た瞬間の印象は、照明を落とした古いバー。
ですが、そこにあるのは、無秩序に積み上げられた異形の神殿。マリア像を中心に並べられた祭壇に横たわるのは、少しくすんだ朱の着物をはだけた少女たち。
かといえば、ルイス・キャロルの脇役たちのような、人ではなく、異形の顔をした人形たちの姿も。
白熱灯と、ろうそくの、オレンジの光に照らされ、さまざまな場所に、人形たちが鎮座しています。
それぞれが虚空を見つめ、こちらの意思を無視するかのように。

天野可淡人形展」
人形作家、天野可淡さんの回顧展。お亡くなりになられている彼女。彼女の人形たちに、新しい姉妹が誕生することは、もうありません。
今日出合った人形たちに、また会えることも、もしかしたら無いのかもしれません。
そういった意味でも、貴重な出会いでした。
普通に、人形を思い浮かべるとき、彼女らは穏やかな微笑みを浮かべているでしょう。でも、可淡さんの人形には、どこか、この世のものとは思えない、不思議な表情を見せています。
こちらの、無意識の黒い意識。思うままに操りたい。傷つけたいという、加虐的な妄想が、自分の目から出ているのを自覚します。
しかし、その、黒い視線を、彼女たちは受け止めてくれません。
操り、傷つけたいと思う私自身が、彼女たちに歩み寄り、自分から腰をかがめ、彼女たちの視線の先に自分の視線を合わせないと、その思いを伝えることが出来ません。
一方的に行われる、暴力を受けるだけの存在でしかないのに、こちらから歩み寄って行かなければならない矛盾。
どちらが主で、どちらが従なのか。跪き、その手に接吻をせがんでいるのは、こちらではないのか…。そんな気分にさせられます。

そんな中、奥の祭壇から離れ右側。小さな椅子に座っている、小さな子供、古ぼけた白い衣装。3、4歳くらいの年齢なのでしょうか。柔らかなほっぺに、射抜くような視線…。なんかこう、惚れました。奈良美智さんの絵の雰囲気にちょっと似てるかな?
もう一度、会いたいな〜。

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3時30分
人形屋佐吉に到着…ですが店員さん不在のため入れません(汗)。しょうがないので外で少し待ってよう〜。

モリハナエビル地下のアンティーク街。そこにある小さなお店です。お店…というよりも、収集家に招かれて、自慢の品を見せられている…そんな印象。
目に付いた写真を何枚か買いました。

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4時30分
eatup×graf@montoak
「装宛」創刊70th+1周年記念イベント。


なかなか来る機会がないので、このまま原宿駅まで歩いて行こうと思っていたら、偶然目にしたgrafの文字。え〜、あのgraf?ついついふらふらと入っていきました。入っていってはじめて、カフェだってことに気が付いたよ。
結構人がいて、なんだか隅っこの方に案内されました。丸いモザイクタイルが壁を飾っている一角。…。まるで洗面所みたいなんですが…それでも小さな丸いテーブルが置かれ、2人くらいは並んで座れそうです。
季節のコーヒーと、クリームブリュレをいただきました〜。
伝票が無いので、レジで品名を告げると、「ああ、あの堀ゴタツのような場所の方ですね」だって(笑)

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18時50分発、あぶくま19号福島行き乗車。
このバスが、旅気分発〜日常行き直行便です。
あ〜、帰りたくないな〜。