宮島達男 Art in You


宮島達男 Art in You
デジタルカウンターを使った作品で世界的に有名な芸術家宮島達男さんが、水戸で行われた展覧会に作品を出展するまで、各地で行ったワークショップキャラバン。宮島さんの分岐点となった各地。那覇、奈良、天売島、広島。その各地にて、それぞれ異なった分野の専門家と対談しながら、自作品を紹介し、その思想「Art in You」を紹介する一冊。展覧会の公式カタログながら、読み物としてのボリュームもあります。


アートとは何か、「Art in You」とは何か。

人々に「感動」というチャンネルがなく、美しいと重う「心」が無ければ、芸術家がいくら美しいものをつくっても、誰にもわかりません
・序文より

アートは難しいものではなく、見た人の受け方の問題なんだと宮島さんはいいます。
感動を呼び起こさせるスイッチのようなもの。そして、その感動は、見た人がいままで体験してきた人生の中に詰め込まれた断片を呼び起こしているだけにすぎないと。

そして。
アートを見ることによって呼び起こさせる想像力。想像力とは、他者の痛みまでもイメージできる力。

紛争で殺された小さな子どもの血だらけの遺骸を抱き、泣き叫ぶ母を想像できたら、もしクラスター爆弾で家族すべてが殺され、ひとり取り残された幼い少女の恐怖を想像できたら、人は決して戦争なんかしないでしょう。
・序文より

アートに感動する心は、想像力そのものであり、想像力が痛みすらイメージするのなら、それは平和を象徴するものだと宮島さんは言います。
それは、誰もが持っているものなのです。

私たちは、色々な場所に赴き、色々な人に出会い、感動を呼び起こすための断片を集め続ける。
そして、アートに出会ったとき、その断片から、想像力を強く鍛え上げる。
その想像力は痛みさえもイメージし、自分の死を、他人へ与える暴力を、仮想体験する。

そして…。

他人の痛みさえも想像できるのであれば…秋葉原での事件も起こらなかったのでは…なんて、思ってしまうのです。