角田宇宙センター「科学技術週間」一般公開

annon2009-04-19

※思い出した順に順次更新中
今年もやってきました、角田宇宙センターです!

角田宇宙センターの前身は、1965年に発足した科学技術庁航空宇宙技術研究所の角田支所(現在の西地区)と、1978年に発足した宇宙開発事業団の角田ロケット開発室(現在の東地区)です。
中略
2003年10月に宇宙科学研究所航空宇宙技術研究所宇宙開発事業団の統合に伴い、両者は、ロケットエンジンの研究から開発試験まで一貫して行う角田宇宙センターとして生まれ変わりました。
・角田宇宙センターの沿革 東地区宇宙開発展示室内

飛行機用の技術から、ロケット開発まで、幅広い研究分野をカバーする、総合試験設備。それが角田宇宙センターです。毎年4月の科学技術週間に行われる一般公開にまた参加しました。

今回の一般公開は、西地区が、「液体水素ロケットエンジン要素試験施設」、「複合エンジン要素試験施設」、「計量センター」、「極低温インデューサ試験設備」、「高温衝撃風洞試験設備」と、東地区のリニューアルされた「宇宙開発展示室」です。
おりょ、今回は結構地味…っていうか、マニアックな施設ばかりですね。
全体的に見れば、施設を見学させると言うより、施設が行っている試験や実験を、小学生でもわかりやすい簡単な科学実験で見せる事の方に重点が置かれている感じです。楽しい理科実験という感じの展示が多かったですね。


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液体水素ロケットエンジン要素試験施設
昭和51年度完成という、角田宇宙センターの中でも古い研究施設になります。30年以上前の研究施設なので、ここで行っているのは国産ロケットの初期段階。実物大ではないスケールダウンされた研究用のロケットエンジンを燃やすための施設です。

中央には実際に実験されたエンジンが固定されたままの実験用架台。てか、これ建物の外にむき出しなんですけど。このまま点火してしまうの?
「近くには民家もありますし、ゴルフ場もあるんで、音を消すための覆いをかぶせます。」
いや、それでも、すぐ横、山なんですけどっ?!音だけの問題かっ?

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複合エンジン要素試験設備
他の施設は規模が大きな試験が出来ますが、その回数は1日に1回がやっと。それではデータが足りません。それよりも規模の小さな試験機を何十回も試験するための施設が複合エンジン要素試験設備です。
ここでの施設見学は無く、建物の外で、液晶画面を見ながらの実験でした。実際に風洞に入れられた小型のスクラムジェットエンジンに超高速の空気の流れをぶつけ、その流れる様を見せてくれます。

それよりもびっくりしたのは、十勝で打ち上げられた純道産(国産ではなくて?笑)カムイロケットに装着されたエジェクタロケット!
ロケットノズルの周りにもう一回り大きいカバーをかぶせたような形状ですが、中にはスクラムジェットエンジンのような、高速で流れる空気を圧縮する仕組みがあり、複合エンジンの形状をしています。

北海道大学宇宙航空研究開発機構JAXA)、エジェクタロケットの共同研究の一環として、平成21年3月16日に北海道広尾郡大樹町において、NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)に委託し、エジェクタロケット小型研究用モデルの亜音速飛行実験を実施しました。
JAXAプレスリリースより

そうか、オーストラリアで失敗した後も、ちゃんとスクラムジェットエンジンの飛行試験をしていたんだ…。
「ロケットの進むスピードは新幹線くらいなので、本当は新幹線にエンジンを取り付けて実験した方が早いんですけどね。」ってオイオイ。(笑)
JRさん、ここは一つ、「はやて」あたりにスクラムジェットエンジンを積んでみません?試験も出来るし、スピードも上がるし、一石二鳥ですよ?

…。むしろ、そんな夢のある話の中で、「とかち」って言葉が出るたび、「とかちつくちて」が頭に流れるのはオタクですかそうですか。

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計量センター
実験には莫大な経費がかかります。本物を飛ばして実験データを取るのは一番とはいえ、予算の限られている宇宙開発ではそれもままなりません。でも、この世を支配している物理学や流体力学は、その本質を変えません。なら、試験データもコンピュータの計算で出せるのではないか…という目的で設置されたのが計量センターと、スーパーコンピュータ「数値宇宙エンジン」です。
ここでは、スーパーコンピュータがたたき出した実験データを、視覚化した分かりやすい映像で見せてくれます。

よくわかりません!(笑)

いや、やっていることはスゲーってわかるんですが、高度過ぎるんで、ふーんとかへーとかしか言えませんよ。

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極低温インデューサ試験設備
インデューサというのは、ロケットに燃料を送り込むターボポンプの先端に付いているスクリューのようなモノ。このスクリューが高速回転する事で燃料をターボポンプに、最終的には燃焼室に送り込みます。ただし、このスクリューが回る環境がマイナス200度近い極低温。そんな中で上手に、速く回さないといけないのです。そのための試験設備がここになります。

高速回転するインデューサの周りにはキャビテーションという泡ができます。この泡がくせ者で、あまり多く発生すると泡だけをかき回してしまい、燃料を上手く送ることが出来なくなってしまいます。また、振動の発生など、嫌らしい現象も引き起こします。かのH-Ⅱ8号機の打ち上げ失敗は、このインデューサの破損が原因でした。切削傷や、整流板の振動など複合的な要因が絡んでいますが、キャビテーションが原因になったとも言われています。

とはいえ、今日はこんな難しい話ばかりではなく。

バナナを極低温にするとどうなるかっ?
これ油で揚げているわけではありません。液体窒素の中に浸しているのです。今日の実験は、様々なモノを冷やしてその形状や状態を確かめる理科実験が中心でした。極低温という環境がどういうものか知ってもらうのが狙いだったようですね。

−196度の液体窒素に、グニャグニャしたゴムボールを浸すとどうなるか。普通に投げれば壁に当たっても跳ね返って来ますが、極低温の状態になったゴムボールは、ガラスみたいに粉々に割れてしまいます。

極低温の中で動く機械たちは、もっとも過酷な条件で動いています。動くためには摩擦を減らすための油が必要ですが、その油も冷えて固まってしまいます。それならどうするか?ミニ4駆を使った実験がこちら。
一番奥の黒いコースが二硫化モリブデン。エンジンの添加剤でおなじみのモノ。
その下の白いコースがテフロン。フライパンの底によく使われています。
それ以外のコースが潤滑油が塗られたコースです。
実際は、どのコースも難所で、登れないミニ4駆がほとんどでしたが。(笑)

それ以外にも、インデューサ周りの部品も展示してあったんですが、真ん中にある手のひら大の部品。コレ一個がホンダのインサイトと同じ値段だそうです。液体酸素と液体水素が混じり合わないようにするシールだそうですが。まあ、何億とも言われるロケットの費用から考えれば安い部品なのかもしれませんが、う〜む。

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高温衝撃風洞試験設備
去年の見学コースにもなっていた世界最大の空気鉄砲、高温衝撃風洞です。

仕組みとかは去年のブログで紹介したので省略。ここで発生させる高温高圧の空気は、大気圏突入時にも匹敵します。
またここでスクラムジェット関連の話を聞いてみました。何でもNASAはX−55というミサイルとスクラムジェットエンジンの合体したような小型試験器を今年飛ばすそうです。実験は小型のモノから進めていくというのはセオリーですが、ミサイルがスクラムジェットエンジンで飛ぶという事が、だんだん現実になってきています。
研究員の方が、「日本はそんなこと(兵器開発)はやってないよ〜!!」って慌てて弁明してました。(笑)

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宇宙開発展示室

東地区。一般公開日以外で見学に来る時は、ここにある宇宙開発展示室のみの公開となります。リニューアルということで中の展示物が大幅に増えました。
ここの最大の見所は、H−Ⅱロケット8号機が打ち上げ失敗した際に、原因究明のため海底から引き上げたノズルの破片(本物!)が見られるところです。


1999年11月15日、HーⅡロケット8号機は種子島宇宙センターから打ち上げられました。しかし、その第1段エンジン、LE−7の異常停止により打ち上げに失敗しました。このエンジンは、原因を究明するために海洋科学技術センター(現、海洋研究開発機構)の協力を得て、小笠原諸島の北西約380kmの水深約3000mから回収されたものです。その失敗を忘れず、原点に戻り真摯にかつ謙虚な姿勢で技術研究・開発に臨み、将来の宇宙開発を成功へと導くため、我々自身の教訓の意味も込めて展示を行っております。
・会場内案内板

海へ落下したときの衝撃で破損した部分もあり、どれが墜落の原因なのかはパッと見にはわかりません。ただ、エンジン噴射口の周りには溶けた部分があり、異常な燃焼になっていたことがわかります。
「当初、予想していた部分とは違う原因がわかりました。苦労して引き上げた甲斐がありました」
この引き上げが無ければ、インデューサ部分の破損は見過ごされていたかもしれません。もしかしたら、第2、第3の墜落があったのかもしれません。そういう意味では、貴重なサンプルたちです。

展示室は、これらエンジンの残骸を含む、現在使用されているロケットの部品などを展示するスペースと、未来のロケット、スクラムジェットエンジンやそれを利用した往還機などを展示するスペース。建物の入り口になり、各ロケットのスケールモデルを展示するエントランス、ビデオ作品などを放映するブースの4カ所に分かれています。
改修前とは見所や展示物が格段に増えていますので、一般公開日以外でも十分楽しめるんじゃないですかね?

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研究交流棟
場所は変わって再び西地区。研究交流棟では子供たち向けのコズミックカレッジ、宇宙クイズが開かれました。

出題は全5問。子供向けだからカンタンカンタン〜なんて思っていたら最後にスゴイ難易度のモノが。

問い5。現在日本の宇宙食として実際に使用されているモノの中で、まだ、認定になっていないモノは次のうちどれでしょう。
1おまんじゅう
2羊羹
3黒飴

わ、わかるかっ!?

正解は1:おまんじゅう
だ、そうです。へえ〜、最初黒飴かと思ってました。てか、黒飴が宇宙食として認定されていることにビックリだ!


そんなこんなで、もうすぐ一般公開も終わりに近づいてきました。

休憩所として使われている、管理棟内で、幼女から執拗に目つぶし攻撃をくらっているロケット君。(笑)
管理棟でパンフレットをあさっていると、なぜかカレーをたくさん持って入ってくるスタッフの人たち。あ、これから遅いお昼ですか。どうも、ご苦労様です〜。今年も皆様のおかげで楽しい一日と、貴重な体験ができました。ほんと、ありがとうございました。