板橋区立美術館 2010イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

annon2010-07-25

「絵本作りで考えるべきこと」講師:マーティン・ソールズベリー

絵本ネタでもう一つ美術館を巡ってみます。ボローニャ国際絵本原画展は、昨日行ったブラティスラヴァ世界絵本原画展とは趣が違い、子供の本のために制作された作品を5枚一組にして送れば誰にでも参加資格があります。プロアマを問わず、その作品が出版されているかされていないかも問いません。現役バリバリのプロの作品と、本すら初めて作ったようなアマチュアが同一テーブルの上で評価されるという、権威も経験も全く無視した作品そのものが評価される開けたコンクールです。今日は、今年のボローニャ絵本原画コンクールの審査員にして、イギリスの大学で、絵本作りの教鞭をとっているマーティンさんの講演が行われます。

まとめるかどうか分かりませんが、とりあえず箇条書き。
アングリア・ラスキン大学教授。ファインアートやイラストを教えている。イギリスでは伝統的に風景画や人物画を観察を主体に描いている。日本はもっとデザイン中心。
個人的な興味で、子供のためのイラストや描き方を教える学部を開いた。初めは少人数しか集まらなかった。
どの国でもそうだと思われるが、出版される本があれば、全体の40パーセントは他国からの翻訳本であると思われるが、イギリスは他国からの翻訳は3パーセントしかない。また、国によって描く対象やテーマが違う。イギリスは商業ベースに乗るかどうかがまず問われるので、広く売れるものを作る傾向がある。しかし、北欧など政府からの援助がある国は、もっと実験的な作品が生み出される。
大学では、学生にはイラストの話はまずしない。ドローイング中心のカリキュラム。たくさんのドローイングを描いて、その中から視覚的に自分のやり方を見つけていく。テーマを決めたり、自分なりの表現を見つけ出すためにスケッチブックに描きためる。最初は観察しながら描くこと。そのうち、少しずつイマジネーションが加味される。
ストーリーボードの話。一枚の紙に、コマ割りのようにページを描きこんでいくもの(見た目絵コンテのようでした)各場面に、どのように絵を載せるか決めていく。基本は32ページ12場面(これは印刷の都合ですね)にどのように絵を入れていくかを確認する。
また、文字とイラストが同じことを言わないようにストーリーボードで組み立てる。文字とイラスト。絵で語られていることは、文字では語らない。キャラクターの内面の言葉と、実際の描写のギャップを活かす。
リズムとペースを活かす。ページをめくったら、次に何が起きるのかを読者に期待させる。また、ページの左端から右端に時間が流れていく(英語圏なので文字の書き方が左から右ですしね)キャラクターが楽しい気持ちが左で語られていれば、右側ではこれから起こる困りごとがきちんと用意されている。
絵で語らせること。絵と文字が違う作者の場合。本来3行分あった自信作のテキストを、描かれた絵を見て1行に削った例がある。イラストと文字を同じことを語るのはムダ。

かいつまんで書きましたが、こんな話を講師が出版した絵本や生徒の作品をプロジェクターで映しながら、通訳を交えながら話をしていました。
ストーリーボード、めくりの効果、時間の流れ、絵と文字で同じことを語らないなど、今まで本などで勉強していたことが、実際に大学の先生から言われると、「ああ、やっぱりこれが正解なんだ」と素直に思えましたね。基本的な事はやっぱりキチンと決まっていて、それは理論上正しいってことが改めて実感できました。
…。ただ、英語でしゃべっているんですが、会場に来ている方、割とマーティンさんの話にダイレクトに笑うんですよ。うわ、この会場英語喋れるやつがいっぱいいやがるっ!