諸橋近代美術館 福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峰1093番23

美術館全景

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福島を代表する山、磐梯山。その北側に位置する高原は、明治21年、磐梯山の大噴火により河川が泥流でせき止められ、大小さまざまな湖沼を生み出しました。裏磐梯とも呼ばれ、夏は避暑地、冬はスキー客でにぎわう観光地です。

そんな大自然の中にたたずむ美術館。それが諸橋近代美術館です。

ここは、シュルレアリスムの奇才、サルバドール・ダリの作品を数多く収蔵する美術館で、特に彫刻作品を多く展示しています。ダリというと、記憶の固執(やわらかい時計)が有名ですが、自分の絵画を彫刻作品として制作した物も多く、その造形はユーモアとリアリティのせめぎ合っていて、不思議な面白さがあります。

今回、注目したのは、企画展のパメーラ・クルック展。
イギリスの現代女流作家である彼女の作品は、絵だけではなく、額縁まで絵の一部として彩色するユニークな方法で、平面の絵を半立体的に描き出すものです。
また、波型のキャンバスに描く技法や、完全な造形物としてのテーブルを、絵画的に彩色する技法(テーブルはちゃんと三本の足で立つ立体ですが、その引き出し、机上に散らばる筆記用具は全て絵として描かれている)など、絵画は平面であるという常識を越えた、情報量の多い絵が特徴でした。

また、遠近感を多用した絵。開いたドアや、窓の外に広がる風景を、あたかもドアや窓からのぞき見ているかのような視点で描かれた絵など、まるでトリックアートのような面白さがあります。

今回の展示会によせて新しく描かれた作品に、日本人のマンガの立ち読みを描いた作品「マンガ」があるのですが、その読まれているマンガが結構正確に書かれていて、「ごくせん」とか「冒険王ビィト」「浦安鉄筋家族」とかの表紙が結構リアルだったりして、本当にイギリスの人?とか思っちゃいました。

サルバドール・ダリとパメーラ・クルック。それぞれどこか現実を離れた、まさに幻想的な作品に囲まれ、日常を離れた…というよりかなりぶっ飛んだ場所に迷い込んだ感覚は、せわしいこの世を忘れさせる至福の時間でした。



よくわかんない…でもよくわかんないのが、ヘンで面白かったよ。