「永田萌の世界展〜夢がうまれるその時に〜」

喜多方市美術館入口前

2006年9月30日〜10月29日
喜多方市美術館 福島県喜多方市押切2−2
公式サイト:http://www.city.kitakata.fukushima.jp/bijyutsukan/
永田萌 妖精の森美術館(ウェブ美術館)http://www.ytv.co.jp/moe/

今回は喜多方市です。ラーメン通ならこの地名を聞いただけでピンとくるでしょう。ラーメンと蔵の町、喜多方です。
…ですが、今回はラーメンではありません(汗)

絵本作家。春の光を思わせる柔らかな色使いから、夏の強烈な日の元でのビビットな色彩まで、カラーインクという絵の具を自在に操り、カラーインクの魔術師とまで言われた、永田萌さんの展覧会です。

喜多方市美術館は、その地域性に合わせて、蔵の形をしています。ちょっと、AtoZの会場を思い出してしまいました。
その中は、中央の受付から左右に分かれて、年代別に展示してあります。向かって左が1994年までの作品。そして右側が現在までの作品になっています。

前半左側。比較的古い作品に関しては、ちょっと落ち着いた、すこし沈んだトーンの作品が多く、鮮やかな色合いの中でも、少しグレー色を使ったモノトーンが混ざった感じの作品が多かったです。
それらの作品をみた素直な感想…。背景までしっかり描いてあるいわさきちひろ…いや、これはそん時頭に浮かんだ素直な言葉なんですが…(汗)
ただ、年代が進むにつれ、その色彩は鮮やかさを増し、圧倒的な存在感を持ち始めます。
なんかこう、ダリっぽい? モチーフが柔らかな子供や要請なのでほほえましいのですが、配色だけをみると、サルバドール・ダリの色彩を思い出してしまいます。

そして、会場右側。比較的新しい作品達。そこはもう。萌さんの独自の世界でした。色彩のビビットさ、やわらかさは変わらずも、そこにある空気感。春の日の暖かさ、夏の日の強烈な日差し。光を浴びてみずみずしさを増す植物たち。そんな空気感が、すべての絵から伝わってきます。色から、日の光の暖かさを感じるような…。いや、暖かさだけではなく、木枯らしや冬のいてつく寒さまで。温度を感じるんです。

そんな中、もっとも心惹かれたのは、2003年の絵「潮騒
波打ち際、波が海岸に崩れ落ちる瞬間。空は深の蒼と白い雲、そして過ぎ去った雨を思わせる黒い雲の競演。水平線の奥には雷雨の名残が残り、海を暗く沈ませている。
そしてそれを見つめる、貝殻に乗った小さな妖精が一人。
強い日差しと、雨に打たれた冷たさ。両方の温度感を感じ、そして、まさに轟きが聞こえてきそうな波の表現…色、温度、音。すべてが一枚の絵から見え、聞こえてきます。
ちょっと初めての体験でした。絵から音が聞こえてきます。描かれた人物の感情を読み取るのではなく、自然のありのままの情景が、そこに存在する音を伝えてくるのです。まさに圧倒的な表現です。

あまりのショックに、しばらく動けませんでした。

ちょっと、この表現を目指してみたいと思いました。作り物のデジタル使いがそれを言うのはおこがましい気もしますが、この日であった空気感を大切にしていきたいと思います。


…。一応きちんとラーメンは食べてきました。喜多方に湧き出る清水を使ったしょうゆベースのスープが自慢の喜多方ラーメン。ここのラーメンは地元で食べなければ真のおいしさは伝わりません…。なのですが…。もともとが味噌派の私としましては、しょうゆベースは物足りないのですよ〜。