町おこしin羽後町〜美少女イラストを使ってやってみた〜

かやたん描いてみた

観光資源や、イベントがなく、観光客が来てくれないと嘆く自治体はたくさんある。そんな中、秋田県の山間にある羽後町で一風変わったイベントが開かれている…。
それが、今年で第3回を数える「かがり美少女イラストコンテスト」です。
題目だけを見ていると、学生が文化祭で行うような、どこにでもあるイベントのようにも思えますが、これに端を発し、有名イラストレーターを起用した地方発のスティックポスター(商標である“スティックポスター”という名称についてはアクアプラスの許可あり!)の発売や、JAを巻き込んでの、西又葵さんのイラストが正面を飾る「あきたこまち」の販売など、羽後という町を広く知らしめ、町おこしを成していきます。
そんな羽後町と、「美少女イラスト」を通じて町おこしをしていく過程を紹介しているのが、「町おこしin羽後町」です。
町おこしin羽後町―美少女イラストを使ってやってみた
国指定重要文化財「鈴木家住宅」とびんちょうタンでおなじみの江草天仁さんのイラストが目印。
作者の山内貴範さんは、これらイベントの仕掛け人であり、自らも美少女イラストを手がけています。友達つくりのためのツールや、学習塾のポスターに自らのイラストが起用されたりと、自分のイラストが周りの人々に影響を与えるものだと早くから気づいていました。
また、地方を離れ、土地土地の名所を回っているうちに、田舎暮らしをしているものにとっては何のことはない、ただの古びた民家が観光名所として人々の注目を集めていることに気がつきます。
こんな、「自分の好きなことを続けること」や、自分の身の回りにある「すぐれた文化、資源を再評価する」ことで、その後の、羽後町の町おこしは、スタートしていきます。

1.好きなことや興味があることをやる
2.埋もれている資源を発掘する
3.新旧の文化を融合させる
この三点が、私が活動していく上での基本理念です。
・本文23ページ まえがき より

近年、「萌えおこし」と称して、安易に美少女イラストや萌え系イラストを多用し、町おこしや商売につなげていくという話をよく聞きます。
しかし、山内さんと羽後町が行ってきたのは、あくまで美少女イラストは副次的な要素でしかなく、イラストが題材にしているもの、紹介しているものが「本物」で「貴重」であることを大切にしています。
たとえば、「あきたこまち」なら、そのパッケージ米が「特A米」という本当においしいものであり、動機がなんであれ、一口食べれば必ずファンになるという優れた商品であったからこそ、未曾有のヒットにつながっているのです。
これに関しては、「マンガ論争勃発2」という本でも(過去のレビューはこちら)“キメ手は「萌え」じゃない!”という記事で羽後町について紹介しています。

多くの町おこしは、まだまだ端緒についたばかり。単にブームに乗って始めたものは、だれにも知られないまま、埋没していく気配すらあるのた。
(中略)
山内さんが考えているのは、一部のブームでお金を稼ぐことではなく、これをきっかけに地元の人々に、自分たちのつくっているものに誇りをもってもらうことなのだ。
・文:昼間たかし マンガ論争勃発2 40ページから42ページを抜粋

マンガ論争勃発2
誇りある文化、誇りある商品が地元にある。それを手にすれば必ず素晴らしさを分かってもらえる。その「手にする」までの導入に美少女イラストという媒体を使っているにすぎない。事実、あきたこまちを食べた方からたくさんの「おいしい」というご意見があつまっているといいます。
もちろん、媒体としての美少女イラストが、「自分の好きなこと」だったことが、大きく貢献しているのですが、これらの点を踏まえず、安易に美少女イラストに頼ることを、山内さんは危惧している。

山内さんが美少女イラストという「手段」を得て、町を巻き込むイベントに発展していく過程は、ゾクゾクするような爽快感もあり、活動のなかで出会った人々、助けてくれた町の人、人づてで集まる大物イラストレーターとか、うわ、本当かよっ!とつぶやきたくなるようなシーンやシチュエーションがぎっしり。山内さんの郷土にたいする真摯なまなざしと、美少女イラストという手段がもたらすギャップが、おかしいやら、すごいやらで、感動と違和感と可笑しさが同居したような本でした。普通に、町おこしの指南書としても参考にできる部分はたくさんあり、なんというか、贅沢な本です。
贅沢といえば、巻頭には、「羽後町点描」と題して、羽後町の文化遺産、建造物やイベントなどをフルカラーの写真で紹介するコーナーがあります。それぞれの文化遺産を地図上に落とし込んだページもあったりと、観光案内的に使うこともできそうです。
イベントに至るまでの爽快な読み口、町おこしの指南書としての側面。羽後町の観光案内としての写真や地図。これを贅沢といわずして、どーするのよ。
多くの方にこれを読んでもらって、ぜひ自分の地元の再発見につなげてもらえたら…なんて思ったりもしますね。

それにしても…。

残念というか、今年の「かがり美少女イラストコンテスト」は7月11日に終わってしまっているのですが…。


そこまで言うのなら見に行ってやる!!
ということで、

旅するアニフォトin羽後町を強行いたします!

出発は明日水曜日!なんと羽後町にある「川原田館」に予約済みだぜっ!!