宇宙航空研究開発機構 情報センターJAXAiマンスリートーク

擬人化HTVのフェアリング

本当は前日の9月30日でしたが、こちらに上げます。
イラストは相変わらず擬人化HTVですwフェアリングって、大変だったのね。

テーマ:「H−2Bロケット打ち上げ成功!」〜新たなる宇宙ミッションの幕開け〜と題して、宇宙輸送ミッション本部、事業推進部、計画サブマネージャの松村泰起さんを解説に、科学ジャーナリスト寺門和夫さんを聞き手として行われました。
松村さんは、H−2の初期段階の仕様を決める段階から計画に加わっていた人物で、H−2プロジェクトの中核にいる人です。

まずは、H−2B/HTV打ち上げのダイジェストビデオを見ながらの解説になりました。
種子島宇宙センターに船で輸送し、1ヶ月半かけて組み立てたH−2BとHTVフェアリングに包まれて組み立て棟から出てきたHTVには、へその緒のように空気ダクトが取り付けられています。精密機械でもあるHTVは、打ち上げまで空調を整える必要があるそうです。
打ち上げは全てコンピューターが行い、人の手が入る場合は、緊急停止させる場合のみ。全てが自動化されて進行していきます。
HTVについては、他国や国際宇宙ステーションの運用に関してギブ&テイクの関係にあります。一定の物資を補給する代わりに、宇宙飛行士を打ち上げてもらったりしてます。また、ISSの運用には、使う電力や実験機器の割り当てや、水や食料の割り当てが決められています。もし、HTVがきちんと運用されないと、日本人宇宙飛行士が実験を行うとしても、電力量や機材の割り当てに制限が出るかもしれないとのこと。HTVが国際的な取り決めで運用されている事を知りました。
H−2Bについては、JAXAの手を離れ、三菱重工がビジネスとして運用しているとのこと。国が100パーセント投資しているのではなく、三菱も資金を投資している関係にあります。工場を持っていないJAXAは三菱に頼るしかないですし、運用テストなどは、JAXAの研究施設に頼るしかありません。今回の初飛行に関しては、打ち上げまではJAXAが責任を持って管理していましたが、今後、打ち上げでの責任が三菱側に移る事になるようです。
今回、初めて気がついたんですが、本来、衛星があって、それを打ち上げるためのロケットを衛星側がお金を出して買う関係にあるってこと。松村さんが、何回かロケットはタクシーみたいなもので、料金が安くて、乗りごこちがよくて、目的地まできちんとたどり着けるのが必須と言っておられました。松村さんたちロケット班は、打ち上げて衛星を切り離したら仕事はおしまい。それこそ打ち上げて15分位したら、「終わったから飲みにいくかっ!」って感じになるそうです。しかし今回のHTVの場合、HTVの運用班はそこからの仕事になります。同じJAXAの機体ですから、あまり意識していなかったんですが、HTV側から見たら、自分をきちんと打ち上げてくれるなら、他国のロケットでもいいって事になりますよね。
H−2Bについては、懸念されたロケットエンジンクラスター化(束ねて使用する)に、どんな難解な問題が発生するか(なにせ日本では始めての試み)やきもきしながら対応していたんですが、たいした問題にはならず、エンジンよりも、HTVを包むフェアリングが、取り付けるたびにあちらが破れ、こちらが破れし、8月頃まで修正が行われ、もしかしたら打ち上げを延期しなければならないんではないか…と思われていたそうです。

今回のH−2Bは、打ち上げ時シュミレーションで時間を計算した結果と、実測値が3〜4秒ほどしか違わず、打ち上げ場所にピンポイントで送り込む事に成功しました。これはHTV側から見ればものすごく良かったことで、もし軌道にきちんと乗れなかったときのために余分に燃料を積んでいたそうですが、その燃料が余り、ISS接近の時の、失敗時のリトライに余裕が生まれたそうです。まさにタクシーのように、安く、振動が少なくて乗り心地の良い、それでいてピンポイントに目的地に到達できるロケットだったわけです。

これからのH−2Bは、ビジネスとして衛星打ち上げをこなしていくわけですが、それには、もっと安く、ニーズの合う打ち上げをし続けていかなければならない。そして失敗のないロケットにしなければならない。日本はなぜか、最初の打ち上げだけは絶対失敗しない(ヨーロッパのアリアンロケットの1号機は失敗している)のですが、不具合を一つ一つ潰していって、確実な打ち上げができるようにしなければなりません。予断ですが、日本のロケットはヨーロッパのアリアンロケットについで2番目に、打ち上げにかかる保険料が安いそうです。
そして、いずれは有人飛行も。現在の技術でも10年後くらいには有人飛行は可能との事。ただ、有人飛行が可能なシナリオが描けるか、必要かどうかの検討が必要になっていくとの事。「お金イッパイ使いますけどね〜」なんて言葉も。
打ち上げGにかんしては5Gくらい。とのことですが、今後打ち上げロケットの推力を途中で絞りながら、あまり衝撃の少ない上げ方を模索していかなければならないそうです。(現在のロケットエンジンは、推力を絞ることができない)
最後に。松村さんたちはロケットをもっと一般の人が使えるようなものにしていきたいと。ロケット自体は、ただの移動手段なので、その移動手段でなにをするのか、みなさんで考えていただいたいと。そして、みなさんを早く、宇宙に案内したいとおっしゃっていました。

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丸の内オアゾ2階、JAXAi正面

マンスリートークが行われた、ミニシアター前

HTVの模型。すげー!欲しいぃぃぃっ!

H−2Bでも使われた、LE-7Aロケットエンジン

マンスリートークを聞いた方にプレゼントされたピンバッチ